満員電車、向かい合う座席の端の長いポールの手すり。
出入り口に近いその手すりにつかまっていた。
背の低い私は、ぶら下がっている手すりよりも楽だから。
とある駅から女子高生が私の後ろから反対側の出入り口、つまり私の目の前にダーっと来た。
指定席に納まるかのように迷わずさっさとリュックを足下に置いて携帯に目をやる。
普通の女子高生だ。
しばらく乗って、ある駅に近づくと私の目の前に座っていた方が降りる支度をし出した。
「あ~次で降りるんだな~」と思っていた。
まだ車内は満員だ。立っている方もいっぱいいた。
電車が停車するスピードになってくると同時に、あの女子高生がだんだんしゃがみだした。
気分でも悪くなったのかとちょっとびっくりして様子を見ていた。
電車が止まった。
すると、女子高生が、低い手すりを持っている私の腕をくぐって一回転するようにスルーっと空いた座席に収まった。
「あれ~っ!そうなの?」
私は心の中で叫んだ。
これだけ満員の中、他の乗客が降りる人に道を空けている間に上手いこと隙間を縫って座った、その素早い動作の見事なこと。
たくましいなあ~と思い、なんだか笑えた。
「疲れてるのかな~、テスト前かな~」といろいろ考えを巡らしていたが、秒速で女子高生は眠りに入った。
しかし、その寝姿がマヅイ。
完全に頭が後ろに行き、顎が上がり、当然口があんぐり。
もし、この車内で、この女子高生に恋心を持っている人がいたらえらいこっちゃ!
他人事ではない、「人のふり見て 我ふり直せ」
いっしょに ゆっくり poco a poco
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